ある年の米国公衆衛生学会で、同じ指摘が老人関係シンポジウムで、連邦の専門スタッフに向けられたのが印象的でした。


それを変えようというのが、地域ケアの二ードを把握する仕事なのです。


老人保健ニードの把握は、老人保健計画を科学的なものにし、みんなの協力をひき出す基礎です。


老人保健計画でも、それぞれの事業ごとに、もっとも適当な目標を使うことになります。


ある地域での老人保健計画としては、一般的には、暫定的な事業目標を立てます。


どうしてもほしいのは、何年後にどういうケアやデイサービスをなんのために行うか、をはっきりすることです。


年次的に達成したい目標を決める。


たとえば、5年後には放置のねたきり老人を管内でゼロにする、という目標をたてることになるでしょう。


究極的な目標を用いるばあいでも、まったくの理想では困ります。


あくまで、いまの私たちの人数や組織や予算、国の制度や法律を前提にし、それの共体的変更や修正、代替案の採用でもって実現しうる日標を考えなければなりません。


したがって、究極的に火災による焼死ねたきり老人を人口30万人のある区内からゼロにしたいという目標のばあいも、「できればここ10年以内に」とかいった期間の指摘がなければなりません。


目標を立てて、公衆衛生も医療も福祉もその実現に力を合わせる。


・・・こういうことは、ある意味では当たり前のことです。

老人保健福祉全部のニード把握をしようとすると、何枚かの図表でないと書き切れないことになり、データ収集がたいへんですから、事務職員の応援も必要でしょう。


東村山市とか、東京都東部、あるいは沢内村の保健調査会(かつての)のような特定組絨やグループでないとできないことも出てきます。


しかし、基本的なデータは、保健所や福祉事務所が共同して収集にあたるべきです。


日本はそれが技術的予算的にできる国です。


パートの人を雇い、毎年のつみ重ねで、地域でとれて、地域で使え、地域のために役立つデータ収集の経験がないだけです。


「国のための」「国による」調査中心主義は、いまどこの国でも、老人保健計画づくりを契機に反省されてきています。

長い間デイサービスやヘルパーなどから放置され・老人健康診査とも無縁の人がいることがわかります。


どういう層が受療しているか、ヘルパーの援助はどこのどの人に、ということが一望できるのです。


これをみて、「寝た子を起こす」やり方だといって、心の内で目録づくりを批判したい人がいるかも知れません。


日本の老人保健対策は、農村でも都市でも、保健所でも福祉事務所でも、いわば穴空きだらけです。


それをさらけ出すまでもない、という意見をよく聞くが、そういって「問題」にブタをする時代ではないでしょう。


これによって、全老人の社会的ふれあいというニードを、センター利用・未利用との関連づけでみることもできます。


地区的偏り、いわゆるデイサービスなどの利用者の常連化が明瞭となるでしょう。


どういうグループやどこからの人たちが「常連」化しているかが、ここで知られます。


ここでの主要目的は、サービスや事業・対策とあわせてニードを測定し、分類することです。


つぎはすこし面倒なニード把握です。


人数、地区が、現実にどこのどういうサービスに結びついているかをとることです。


サービスの範囲を広くするか狭くするかで、作業量やデータ把握の実現性がかわってきます。


こういうことは、ふだん当然やっているはずなのですが、じつはたいてい不完全もいいところで、○○町、○○保健所の地図上に画けるものには至っていない所が多いのです。


統計のとれている結核でも、少し詳しい地区データをとるとなると、ほとんどの保健所ではお手あげで、ニード整理と目録化は大変遅れている、といってよいでしょう。


単純なモデルからいくと、まず健康状態など属性的データを、画けるようにとります。


表でも図でもよろしいと思われます。


実際はもっと大きな表、大きな図、複雑なデータ構成になるでしょう。


あとは、ねたきり老人を受療有無、受療先別にみたものが必要です。


できれば、転勤で人が代っても年々うけつがれるとよいでしょう。


こういう表が、新任の保健所長、ベテランの市の老人福祉課長、そしてヘルパーやデイサービスの机や手にいつも渡っていることがのぞましいですね。


共通理解・認識の基盤ともなるデータです。


民生委具も、自分の受け持ち区については頭にははいっていますが、こんどはこの目録のおかげで、他との比較、自分の区の特徴を客観的につかめるようになります。


東村山市老人保健事業では、まずこの作業から始めたといってよいでしょう。


東京都東部ねたきり老人調査は、対象をしぼり、発想としては同じ観点からまず地区ニード把握から入りました。


・・・このように、いくつかの実際例をみることができます。

地域的ニード目録・・・


これは、担当地区とか小さな行政区域ごとに、とったニードを整理し直したものです。


この作業、過程には、実際には列挙方式よりも、もっと詳しい整理が必要となるでしょう。


ここでの目録づくりの重要な意義は、地区のあいだの格差をみることです。


病気に及ぼす社会経済的要囚と老人の病気・健康との関連をみることになります。


B地区でデイサービスの利用が多いのは家庭介護が充実しているからなのか・・・。


C地区でなぜ5%もねたきり老人がいて、しかも医療から放置されているか・・・。


D地区で特別養護老人ホーム入所者がこのようにも多いのは、この地区に一人暮しや老人世帯が多いのと関連があります。


なぜこの地区に「老人放棄」的世帯が多いのか・・・。


そういう社会的諸要因との関連考察や分析に進む手がかりが、地域ニード目録から得られます。

できたら健康度(他への依存度)と経済状況、デイサービスやヘルパーを利用しているかいないか、あたりを主軸に分類し直せるくらいの列挙ができるとよいでしょう。


列挙の段階では、どういう状態の老人がどれだけいるかをつかむことが本旨となります。


活動のうえで重要なこと、たとえば自殺数、焼死、入院拒否例といったことも大切なニードです。


そのさい、どういう病状、経済的には?という情報も落さずに入れるのが大事です。


これらのデータは、いままで、年度の事業計画のとき、同僚と話しあったり、上司に話したりしてきたものです。


これらを意識的に、落ちこぼれないように全面列挙し、それらの分類に進もうというわけです。


・・・この段階で、どこからのサービスがどれだけ欠落しているかについてのニードを発見できるでしょう。

生命や健康に関する私たちの仕事こそ、こういうデータに墓ついた仕事をすべきです。


そういう発想から出たのがこのニード目録です。


まず羅列から実際に行うには、いうまでもなく、実行可能な目録づくりでなければならないことになります。


そこで、どういうニードがあるか、各人がめいめい勝手に列挙する方法もあります。


それよニードといえるかどうかの吟味も厳密にはせず・・・


日常活動のなかで得られ、つかんでいることをみるのです。


老人人口、ねたきり数、糖尿病患者、防げた死亡、気づかない病気、経済階層別の二ード、女と男の違い、デイサービスを利用しているか、退院老人患者の求めているニードなど・・・


片っぱしから、拾いあげていく方法もあります。

老人について、地域でいろんな活動をしようとするさい、多種多様のニードが出てきて、それをどう整理するかが問題です。


そして、今の日本の老人保健事業は、どこの町や区でも、保健所は保健所で、市は市独自で、福祉は福祉で、デイサービスデイサービスで・・・


ばらばらに自分のところだけ手がけていることが多いですね。


全休がどうなっていて、そのなかで老人病院は、訪問看護は、どこの部分を担当しているかを明瞭にさせることが必要です。


そのためには、少し迂遠なようですが、ニードの段階で、全体的な鳥鰍図を得ておくことが役立ちます。


私は、そのことを「ニード目録」と名づけてみたいのです。


ニード・インベントリイともいいますが・・・


一般企業では、在庫についても、取引先のことでも、顧客の推計、市場調査ということでも、必ずニードを把握しているものです。

発見は困難ですが客観的に存在する症状や病人まで含めたものを、ある氏は「絶対的ニード」といっています。


同様な考え方の区分で、「発見可能ニード」「臨床的ニード」・・・


そして、もっぱら受診患者中心の概念として、「自覚的ニード」がわけられます。


ここで、氏は主に医療のことを考えていますが、私たちがもし保健と福祉とにわたるニードを全体的に把握しようとすると、やはり死亡と健康の多くも含めた、広義のニードをとる必要がでてくるでしょう。


実際のニード把握において各種データを分析するさい、そのデータは自覚的ニードなのか絶対的ニードかをはっきりさせておくことが大事です。


たとえば、患者調査を使うばあい、聞きとりによるばあい、デイサービスやヘルパーの意見を聞くばあい、「在宅看護」のニードを測定するさい、そのニードはどこに位置づけられるものかを明らかにしておくことが必要でしょう。